初夏の作文

全く何も喋らずに、俺の言いたいことが全部言葉になればいいと思う。

心を治すには言葉を紡がなくてはいけないけれど、言葉を紡ぐにはある種の強さが必要かもしれない。そして今の俺にはそれがどうもないような気がする。

心の言語的表出。試行1。

砂漠だけの丸い星に行って、走って何周もしたい。

心の言語的表出。試行2。

暮らしの愛おしみを黙殺して深い穴に落っこちたい。

心の言語的表出。試行3。

無精髭を生やして毎日セントラルパークを徘徊したい。

心の言語的表出。試行4。

抗うつ薬を粉にして鼻から吸い込んで思い切り咳き込みたい。涙が出てきたらそれをぺろりと味見したい。

 

俺の才能も随分枯渇したと思う。昔はもっと無意味なことを書けた。

 

ダンス・ダンス・ダンス。希望も意味もない人生だって構わない。必要なのは音に合わせてステップを踏むこと。人々が感心するぐらい、上手にステップを踏むこと。止まっても、意味を考えてもいけない。ただ音に身を委ねろと羊男は言う。

 

人生はうまくいかないけど、とにかく音を立て続けようとさっき思った。死んだ後誰かが俺の不恰好なリズムを笑ってくれるなら、少しは救いもあるものだもの。