北海道2日目

北海道2日目。今日は疲れた。

 

一人暮らしがしたい。家族からは離れて、自分の選んだ人間と自分の選んだ場所で自分の好きなことをしたい。私はそうしなくてはならない。新しい場所で新しい人生をスタートさせて、私は初めて自分が自分みたく思えるんだ。

 

目一杯喉を震わせても音は生まれない。大きな声で喋りたくはない。でも決して黙ってはいけない。声の不在は自己の不在だからだ。私は私であるが故に不全なのか。不全ゆえに私なのか。どちらにしても、私の耳元で音は鳴り続け、一刻ごとに私の自我を圧迫する。耳を塞げば音は頭の中で反響し増幅する。増幅した音は重い振り子のように内側から私の頭蓋骨を打つのだ。

 

墓地のような雪国のバーに行った。前世紀の音楽と濁った空気が宿命的に空間を支配し、人々は真空の中に言葉を放つ。退廃。肉体の消滅。そして暗い思索のような頭痛。52歳のロックシンガーが適当な相槌をうつ時には、意味がでんぐり返しをして、猥雑な皮肉が残る。

 

あるいは明日には世界に意味と一貫性が回復しているかもしれない。放たれた言葉が真空ではなく、確かな震えを空中に生んで消滅していく世界に私は再び目を覚ましたい。美しい人生には美しい朝があるのだ。意味の回復を願って私は眠りにつく。降り積もる雪は道ゆく人々の重みで氷へと変化する。12月24日。とある雪国のクリスマス・イヴ。